(株)岩波書店『岩波書店八十年』(1996.12)

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月日 事項 年表種別
大正13年(1924) 9月10日 幸田露伴《芭蕉七部集評釈冬の日抄》刊―抄と名づけられたのは俳句を除いたからである。連句の部分だけ評釈したものは1929年出来上った。その後1935年ごろから著者は七部集を全部、すなわち俳句の部も入れて評釈を試み、1947年それを完了した。途中で中断の時期があったとはいえ、前後23年を要し、著者の大きな業績の一つとなった。 岩波書店
昭和17年(1942) 11月3日 回顧30年感謝晩餐会開催―創業25周年(1937年)の折、岩波茂雄は恩顧をうけた人々を招いて感謝の会を催したい考えであったが、日華事変勃発後の騒然とした時勢に遠慮して果たさなかった。その後5年を経てこの年30周年を迎えたが、時局はますます悪化の一途をたどり、好転の見込みは全くなかった。しかし岩波は、もしこの機を逸すれば、自分をして今日あらしめてくれた恩人たち―生涯を回顧してその深い恩誼を想わずにはいられない人人―に対し、終に感謝の意を表することなくして終るであろうと考え、困難を排して感謝晩餐会を開くことにしたのである。会場は大東亜会館(東京会館)、来会者は約500人、岩波書店に深い関係のあった人々、岩波が少年時代から直接間接に教えをうけ尊敬を献げていた人々、および、いわゆる世間的地位は低くとも、渝わることなき親愛の念をもって長く交際をつづけて来た人々を選んで招待した。物資不足の折、宴会用の材料を集めるのにも一方ならない苦労があった。来会者は、三宅雪嶺・幸田露伴等の耆宿から、当時新進の学者に至るまで、わが国の学界及び思想界を代表する人々を殆んど網羅していたが、時流にそった評論家たちは、この会を指して“自由主義者最後の晩餐会”と評した。妨害者があらわれることを心配した人もあったが、幸いに異状なく会を進めることができた。岩波はこの席で自分の半生を語り、感謝の真情を吐露した。この日たまたま同時刻に同会館で情報局主催の大東亜文学者大会があったが、主要な人物の多くが岩波書店の会合の方へ出席して寂しかったといわれる。この晩餐会の記録は《図書》12月号に特集として掲載された。 岩波書店
11月27日 軍部の注文によりふたたび岩波文庫納入―戦線の将兵に慰問として送るため用紙のほかにインクも軍より配給され、下記10点各1万部を特価にて納めた。//森鴎外《高瀬舟》、幸田露伴《五重塔》、尾崎紅葉《二人女房》、国木田独歩《武蔵野》、島崎藤村《千曲川のスケッチ》、泉鏡花《歌行灯》、パウル・ハイゼ《忘れられた言葉》、ヘルマン・ヘッセ《漂泊の魂》、ラファイエット夫人《クレーヴの奥方》、スタンダール《カストロの尼》。 岩波書店
12月5日 《図書》12月号、終刊号として発行―各出版社の月報類は日本出版文化協会発行の月報に吸収されることになったためである。やむをえぬ《図書》の廃刊を惜しむ読者の要望に対しては、希望者に毎月の発刊書目をはがきに印刷して知らせることになった。(翌年3月より実施)。//〔12月号内容〕表紙:ミレー〈種まき〉、解説:児島喜久雄。里見弴〈読書について〉、西田幾多郎〈明治二十四五年頃の東京文科大学選科〉、高村光太郎〈三十年〉(朗読のためのことば)。//特集〈回顧三十年感謝晩餐会記録〉内容〈回顧三十年感謝晩餐会の記〉〈あいさつ:岩波茂雄〉〈来賓あいさつ:三宅雪嶺・牧野伸顕・小泉信三・幸田露伴・明石照男・高村光太郎(詩朗読)・天野貞祐・安井てつ・藤原咲平〉〈来会者芳名〉〈付録・杉浦重剛先生に奉る書:岩波茂雄〉。 岩波書店
昭和22年(1947) 7月30日 幸田露伴氏逝去。 岩波書店
昭和28年(1953) 9月 岩波映画製作所《文化をになう人々》2集完成―35ミリ、白黒3巻。演出:渥美輝男。1集に撮影されなかった学者・文学者を追加して記録、幸田露伴・芥川竜之介氏など故人の俤も収録されてある。 岩波書店
昭和52年(1977) 5月 岩波文庫創刊50年、岩波新書創刊40年、ならびに青版新書1000点刊行を記念して、5月から11月にかけて以下の諸計画が行われた。//▽5月1日発行の《図書》5月号を〈岩波新書創刊40年記念号〉とした。この号および6月号には、読者の投稿〈私の愛読した岩波新書〉計50篇を掲載した。これは3月23日以降の新聞各紙の広告欄で投稿を募り、4月7日締切までの短期間に寄せられた1478通のなかから選んだものである。//▽5月19日、〈岩波文庫創刊50年、岩波新書創刊40年記念感謝の会〉を東京会館にて開催、参会者278名。続いて5月24日には京都都ホテルにて開催、参会者106名。//▽5月20日、新しく《黄版新書》が発足し、この日10点、6月には5点を刊行した。なお5月16日から6月24日に至る間、岩波新書の全出品分について、正味を3%引きとした。//▽5月26日、大阪において〈岩波文庫創刊50年、岩波新書青版1000点刊行記念岩波の文化講演会〉を開催、以後11月9日の東京に至る全国20都市で講演会を開催した。来会者総計2万6669名。//▽9月1日発行の《図書》9月号を〈岩波文庫創刊50年記念号〉とした。この号および10月号には、読者の投稿〈私の古典 一冊〉計42篇を掲載した。これは7月21日以降、各新聞でハガキによる投稿を願い、8月6日締切までに寄せられた836通のなかから選んだものである。//▽9月16日、津田左右吉《文学に現はれたる我が国民思想の研究 一》をはじめとする岩波文庫の新刊10点を一挙に刊行。//▽またこの日、岩波文庫既刊書目の中から久しく版を重ねていなかった32点40冊を、一定の部数に限り、榿色の帯をつけて復刊した。//書目一覧―東条操校訂 物類称呼/藤田徳太郎校註 松の葉/佐佐木信綱編 白文万葉集全2冊/良寛詩集/金田一京助 ユーカラ/幸田露伴 猿簑/幸田露伴 連環記/内田魯庵 社会百面相全2冊/木下利玄全歌集/森鴎外 澀江抽斎/M.トウェイン 赤毛布外遊記全3冊/G.ホワイト セルボーン博物誌全2冊/ヴォルテール 哲学書簡/ベーオウルフ/シング アラン島/ブリュイエール カラクテール全3冊/幸徳秋水 基督抹殺論/貝原益軒 大和俗訓/安本健吉註解 千字文/秋月胤継訳註 近思録/山田準・鈴木直治訳註 伝習録/辻善之助編註 沢庵和尚書簡集/加藤繁訳註 旧唐書食貨志・旧五代史食貨志/鈴木正三 驢鞍橋/M.ルター 現世の主権について/アルーペ神父 聖フフンシスコ・デ・サビエル書翰抄全2冊/G.ケルレル 家畜系統史/加藤繁訳註 史記平準書・漢書食貨志/宮崎安貞編録農業全書/大蔵永常 広益国産考/クローン 民俗学方法論/フレイザー サイキス・タスク。 岩波書店
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