(株)岩波書店『岩波書店八十年』(1996.12)

"渡部昇一"が書かれている年表項目はハイライトされています。

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月日 事項 年表種別
昭和57年(1982) 9月15日 関東軍の秘密細菌戦部隊・731部隊(石井四郎部隊長)をあつかった森村誠一のベストセラー《続・悪魔の飽食》(光文社、カッパノベルス・ドキュメント・シリーズ)に掲載のグラビア写真35枚のうち25枚が、明治末年、中国東北部(満洲)でペストが流行したときの記録写真であることがわかり、作者は〈間違いと判明した以上、今後改版刊行されるものから問題の写真を削除する〉と読者に陳謝した。一方、発行元の光文社は10月18日、日本書店組合連合会に同書の返品を要請し、回収した。11月中旬、作者は同社発行の《月刊宝石》編集部に依頼され、写真誤用についての経緯文を書いたが、同社から作者の意見の全面的削除を求められ、これは出版社の作家に対する言論・表現への介入であるとし、作者と同社とは決裂した。細菌戦研究のための人体実験に捕虜を使い、生体解剖などを行った戦争犯罪を厳しく告発したドキュメントであるこの本に着目していた右翼団体は、連日作者宅や光文社に押しかけた。この件についての作者の文章は《文芸春秋》(1983年1月号)に掲載されたが、いっぽう中田建夫〈《飽食》したのは誰だ?〉、渡部昇一〈《悪魔》と《天使》の間〉(《文芸春秋》1983年2月号)、杉山隆男〈《悪魔の飽食》虚構の証明〉(《諸君!》1983年2月号)をはじめ作者と作品の中身を攻撃する文章が各紙誌に発表された。しかしマスコミのほとんどはこうした右翼の動きや言論に対しての報道と論評を行わなかった。日本出版労働組合連合会は《'83出版レポート》(1983年7月、No.22)・《出版労連》(1984年1月1日号)などでこの問題を取り上げ、言論・出版の自由について掘り下げた。なお、角川書店から1983年《新版悪魔の飽食》、《新版続・悪魔の飽食》(以上文庫)、《悪魔の飽食 第3部》(新書)が出版された。 出版界
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