(株)岩波書店『岩波書店八十年』(1996.12)

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月日 事項 年表種別
昭和8年(1933) 4月1日 雑誌《文学》および《教育》創刊―この2誌の前身は岩波講座《日本文学》および《教育科学》の月報であった。これらの講座が完結した機会に改めて月刊雑誌として発行することにしたのである。編集者名は表示しなかったが、《文学》は西尾実・藤森朋夫氏、《教育》は城戸幡太郎・留岡清男の両氏であった。 岩波書店
昭和9年(1934) 12月 中等教科書《国語》刊―全10冊。編集:西尾実他。教科書出版は、文部省の監督下にあったため、編者としては自由に所信を発揮することができず、また出版者としては、特色ある出版が困難であったので、岩波書店は従来手がけなかったが、国民教育の重要性に鑑みてあえて理想的教科書の出版を企図し、数年の準備を重ねて、この教科書の刊行を開始したのであった。販売に当っては、従来弊害の多かった学校・教職員に対する直接売込みの方法を排し、まず新聞紙上に教科書発行についての店主の決意を表明し、その後もすべて公けの広告宣伝に依存した。反響は予想以上に大きく、最初の年度に第1巻は3万5000部発行、他の巻もこれに準じ、全国語教科書中第2位の発行部数を示すに至った。 岩波書店
昭和32年(1957) 5月6日 《日本古典文学大系》刊行開始―全66巻、索引1巻。監修:高木市之助・西尾実・久松潜一・麻生磯次・時枝誠記。戦後の新しい教育や時代思潮の影響で、日本の古典が若い人々にとって疎遠なものになりつつあること、しかも新たな時代を迎えて伝統に対する再評価がますます必要になって来ていることを考え、日本の文学古典を国民に親しみやすいものとして伝えるため、新しく構想された叢書である。しかし、単にやさしい普及版という形式でこの目的を達成することは不可能であり、むしろ厳密な校訂・精緻な注解をほどこして、標準的なエディションを作りあげると同時に、一方において表記や段落等に原作を傷つけざる懇切な工夫を施して一般の読者に親しみやすいものとすること、また注解に正確綿密を期することが正しい方針であると認められ、この方針が採用されることとなった。表記法において本文のかな書きを必要に応じて漢字にすること、句読点・改行・会話における「」等を使用することなどがその工夫であったが、その場合にも、底本とした原典の原型が常に確認できるように配慮された。以上の方針を決めた後、まず最初に30数冊を選定、それぞれの底本を検討し、その注解者を選衡、執筆の要綱をさだめたが、それだけでも、20数回の会議を重ね、一年余の時日を要した。古典の性格によって注解の施し方も一様でないため、執筆開始に先だって、何頁かのサンプルを求め、特にこの大系のための原稿用紙を作製したが、その型も20余通りを用意せねばならなかった。岩波書店の出版企画中、この企画ほど事前の準備に手をかけたものは例がなかった。それにも拘らず、執筆の段階に入ると、各執筆者の学問的良心は、いやが上にも厳密を期することとなり、進行の予定はしばしば狂い、いったん組上げた組版を組みかえるというような事態も生じ、進行は困難を極めた。しかし、この努力によって、国文学者・国語学者・歴史学者・仏教学者・中国文学者等、広汎な専門家の協力による比類なき日本古典の出版が達成された。また、印刷・造本の技術においても今日における最高の水準を示した。発売とともに大きな反響をよび、最終巻まで6年間読者の変らぬ支持を得た。(1963.4.5完結)。全巻購読者に索引(1963.11.20刊行)を贈呈。 岩波書店
昭和38年(1963) 4月10日 《岩波国語辞典》刊―編集:西尾実・岩淵悦太郎。話し、聞き、読み、書くなど現代人の生活に欠かせない言葉を厳選して、優れた国語辞典をつくりたいという長年の念願が、国語学の権威である両氏の編纂によってここに実現した。収録語数は5万7000余、現代語のほかに学習の参考となる古語も収める。特に日本語のうちで最も基礎的な語については、多くのスペースをさいてその意味と用法とが記述されている。また主要な漢字2300余を大きな活字で掲げ、音訓・字義・熟語などを記して造語成分としての漢字の働きが説かれている。社会の変動に伴って言葉の意味・用法が変化し、新しい語が生まれて語彙が豊富かつ複雑になり、さまざまな混乱が生じている状況のなかで、一字一語のもつ根本的な意味を正確につかみ、用法上の微妙なニュアンスをとらえることによって、生きた日本語の核心にふれることができる。このような困難な課題にはじめて応え得る辞典として、各界各年齢層から高い評価を得て、多数の読者に迎えられた。本辞典の補訂作業は絶えることなく進められ、1971年2月には《第二版》が、1979年12月には《第三版》が、1986年10月には《第四版》が刊行された。 岩波書店
昭和39年(1964) 4月6日 《日本古典文学大系 第二期》刊行開始―全34巻索引1巻。監修:高木市之助・西尾実・久松潜一・麻生磯次・時枝誠記。同大系の第一期は約6年半の日子を費やして本巻66冊が1963年4月5日に完結、索引を同年11月20日に刊行した。しかし企画の当初から、日本文学の代表的古典を66冊に限定することには困難があり、他日を期して割愛した著作も少なくなかった。ここに第二期の刊行を企画し、再び監修の諸先生を煩わしてあらためて34冊を選定した。この第二期の特色は、書目を狭義の文学作品に限らず、漢詩文、歴史文学、仏教の法語・法話、思想家の文藻、評論などにまで範囲を拡大したことにある、これによりわが国の文学の多面的展開が再現されることとなった。(1967.3.31本巻完結。1968.2.5《索引》刊行)。 岩波書店
昭和46年(1971) 2月5日 《岩波国語辞典 第二版》刊―編集:西尾実・岩淵悦太郎・水谷静夫。1963年4月刊行以来8年、好評を得てきた本辞典の採録語彙を再検討し、新語・外来語を含む600語を加えた結果収載語は5万8000に達した。新たに漢字の音訓および熟字訓を知る手引き40頁を巻末に付すると共に、国語審議会の審議の進行に伴い当用漢字音訓表が改定される場合を見越して、編集部作製の資料を添付した。なお、第10期国語審議会が、1972年6月に答申(1973年6月、内閣告示)した〈当用漢字改定音訓表〉〈改定送り仮名の付け方〉は、1973年1月10日発行の第二版第3刷から本文に反映した。 岩波書店
昭和54年(1979) 4月16日 西尾実氏逝去。 岩波書店
12月4日 《岩波国語辞典 第三版》刊―編集:西尾実・岩淵悦太郎・水谷静夫。1971年2月、第二版を刊行して以来の言語生活の変動に即して、今回、全面的な改稿を行い、新たに約1000語を加えて内容の一新をはかった。判型も大きくしてB6新判とし、表紙には特製のビニールを用いて使いやすく、一層読みやすく引きやすいよう、造本上にも工夫を加えた。 岩波書店
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